まだ【ビール】が発泡酒でもなく第三のビールでもなく【ビール】しかなかった時代、我が家の晩酌の風景は瓶ビールでした。自営業だった父は夕方5時には家に帰っていることが多く、瓶ビールとグラスを並べての晩酌。この頃の家庭ではよく見かけた風景だと思います。ダース入りのケースに入った空瓶を配達に来た酒屋さんに返すため、玄関口まで運んだことも今にして思えば昭和の風景だったのかもしれません。
そう、瓶ビールには必ずグラスが必要なのです。今でこそ缶ビールが主流となった今、面倒な時はそのまま飲むこともあるでしょう。しかし、瓶の場合はやはりグラスが欲しいところ。それも大きなジョッキというよりも一口で飲み干せる手頃なサイズのグラス。最近はリサイクルショップで見かけるビールメーカーの景品でついていたようなあのグラス。このビールグラスもそんなことを思いながら制作したのがきっかけでした。
しばらくしてあるクラフトフェアに出展していたときのこと、こんなお客様がいらっしゃいました。 「以前ビアグラスを購入したことがあり、今回息子が二十歳になったのでお揃いのグラスを買いにきました。」と。
普段からグラスを使っていただいていたことももちろん嬉しかったですがそれ以上に息子さんとの晩酌を楽しみに大事なグラスを選んでくれたことがとても光栄でした。親子いっしょに瓶ビール片手にグラスを酌み交わす風景が目に浮かぶようでした。
今でも町中華では「大人の義務教育」 633 として不動の地位を築いていますがぜひ現代のお茶の間にもあの風景をもう一度。
廣島晴弥
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廣島晴弥