コラム_第八回 - h-collection|廣島晴弥

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コラム_第八回

 

 

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コラム

 

 

モノから生まれる

暮らしのイメージ

SHAPE&DECORATION vol.3より

 

 

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 第八回

モータサイクル

 

 

 

中学生の時初めて河原でオートバイに乗せてもらった。
50ccと80ccだったけどとてつもないチカラに翻弄されました。 楽しくて仕方なかった。

16ですぐに原付の免許をとった。 当時開発中だったお台場から夢の島あたりまでを夜通し暴走族と警察から逃げ回りながら走りまわって転びまくったのだった。 膝のかさぶたはすぐにまたアスファルトで削ぎ落とされて、絶えず足を引きずってたな。

怖くなかったんだな。 その先なんて思いもよらなかった。
1人死に2人死に、大人になるに従ってみんなバイクを降り始める。 目が覚めたんだ。
20歳頃、サーキットに行った。 本気でやりたかったんだね。 中途半端でストリートで死ぬなら思いっきりやった方が親父に申し訳が立つ気がしたから。

『お前は国の為に死んだと思う事にする…』

2つの戦争を戦って生き抜いた親父はそう言った。
それから親父が死ぬまでレース三昧で生き、死んでからはガラスを吹いた。 親父がガラスのコレクターで西洋アンティークの店までやってたからね、行くあてのない先を決める小さな手掛かりだったんだね。

それから福井県に住み、東京、岡山、長野。
いつもバイクがそばにあって、どこにでも行けた。

つらくなったらこいつに乗ってどっか行っちまえばいいんだ。 そう思えるだけで多少窮屈でもやっていけるもんだ。 16から乗って今51。 35年。 いろいろあったがバイクを降りようと思ったことはなかったな。 昔は軽快なバイクが好きだったんだ。 走りを構築するのが楽しかったから。 今はアメリカのバイク。 どこまでも走れる気がしたし、そんな自分が想像できた気がしたから。

インディアン スカウト。
こいつが提案してきた僕の暮らしのイメージ。 それを今は楽しんでる。 なんとなくガラスもバイクもおんなじだと思ってんだ。

ひょっとしたらバイクを変えたのではなくて暮らしが変わったのかもしれねぇな。
どっちでもいいんだけど。

 

加倉井秀昭⁡

 

 

 

 

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scratch&noise
加倉井秀昭

 

 

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